T 庭樹の組織とその働き

 医者が病気を治療し、健康を管理するためには人体の構造や仕組みを詳しく知っておかなくてはなりません。それと同じように庭樹の健康管理のためにも、樹木の構造や働きを十分に知る必要があります。

 見 出 し
 1.  5.
 2.種子  6.
 3.  7.
 4.
庭樹の組織とその働き
 1.花

 庭樹の花はクロマツやアオキのように目立たない花と、ツバキやハナミズキのように美しく目立つ花とがあります。目立たない花は、いつ咲いたかも気がつかず終わってしまうことも多くあります。針葉樹にはスギ、ヒノキなどのように花粉症を起こす花がありますが、多くの花はあまり目立ちません。

アオキ雌花 ←アオキの雄花
 多くの庭樹の花は、一つの花の中にがく片、花弁、雄しべ、雌しべからなり、これを両性花といいます。雄しべ、雌しべのどちらか一方しかない花を単性花といいます。また同じ株に雄花、雌花を咲かせる庭樹を雌雄同株、株により雄花、雌花のどちらか一方しかつけないものを雌雄異株といます。実を採取したり、花を観賞したりする庭樹は植えるとき注意する必要があります。
 蕾や花がたくさんついた場合、樹勢低下防止や大きな花を咲かせるなどの目的で摘蕾、摘花を行って数を減らします。
 八重咲きの花は、雄しべが花弁化したものです。そのため結実しないものが多くあります。
 庭樹には花芽の形成される時期があり、それぞれの樹種によって異なっています。花が咲かない理由の一つに花芽が形成された後の整枝剪定、あるいは花芽の形成時に病虫害に遭い早期落葉などを起こし充実した花芽が形成されなかったなどが考えられます。また土壌中に肥料が多いと、栄養繁殖ばかり繰り返し、花芽が形成されないこともあります。
 夏の終わりに毛虫やイモムシに葉が全部食害され、丸坊主になったサクラが、季節外れの秋に花を咲かせることがあります。これは葉が食害されることによって落葉したと思い、秋の小春日和を春が来たと勘違いして開花したものです。

シラカシの花 ←シラカシの花

 2.種子

 雄しべから花粉が飛んできてあるいは昆虫に運ばれて、雌しべで受精が行われると種子ができます。しかし、同じ株の雄花、雌花同志では受粉しない庭樹が多くあります。ウメなどは異なる品種を植えることによって多くの実を得ることができます。ツバキ、トチノキなどの大きな種子からキイチゴのように小さな種子までいろいろあります。

 また、羽根をつけた種子も多く、アカマツには1枚の大きな翼がついています。カエデ類は1枚の翼を持った種子が2個一緒になってプロペラのような形になっています。高いところから落とすとクルクルときれいに回転しながら落下します。遠くへ飛んでいくのに都合がよいのでしょう。毛を持った種子(ヤナギの仲間)、堅い核で包まれている種子(ウメ、モモ)などいろいろな特徴を持っています。多くの針葉樹は球果が形成されその中に種子ができます。種子を運んでくれるものは風や昆虫の他に獣や鳥、水などがあり、それぞれに適した色や形をしています。

カエデ類の実 ←カエデ類の実

 多くの庭樹は、開花後受粉し、1年以内に結実し、種子採集ができます。しかし、アカマツやクロマツは春受粉後、翌年の秋に成熟し、それまで採種できません。即ち、種子が成熟するまで1年半かかります。種子をつけるためには、開花させることが不可欠ですが、中には人工授粉を必要とする庭樹もあります。また実肥と呼ばれるように施肥の方法にも関連してきます。

 3.芽

 将来、枝となる芽には、芽の位置によって名前が付けられています。枝の先端についているのが頂芽で、通常形が少し大きいです。枝の側面についている芽は、側芽または腋芽といいます。葉の付け根には必ず腋芽があり、頂芽が何らかの理由で発芽しなかったとき、代わりに上部の腋芽が発芽します。これらの芽のように、芽の出る位置が決まっている芽を定芽といいます。これ以外の所から出る芽は不定芽といい、枝を強く剪定したり、庭樹の生長に障害があったとき、本来芽が出ない太い枝や幹から生じます。

 また花芽と葉芽に分けることができます。花芽は葉芽に比べ少しふっくらとして大きく、葉芽は細長くて小さいです。花芽が形成される位置は、庭樹によって異なります。枝の頂端にできる庭樹は、モクレンの仲間、ツツジ類、クチナシ、ジンチョウゲ、ハナミズキ、シャラノキなどです。枝の側芽が花芽になる庭樹には、ウメ、サクラ類、ヒメシャラなどです。

 芽の出方によって外芽と内芽にも分けます。外芽は樹幹から見て外側に出ている芽で、内芽は幹に向かって伸びる芽です。内芽はそのまま伸ばすと邪魔な枝になるので、ふつうは外芽のすぐ上を斜めの切り口にして剪定します。

 4.葉

 葉の形はいろいろあります。花とともに庭樹の名前を調べる、大きな特徴を持っています。葉柄や托葉のない葉もありますが、基本的には葉身、葉柄、托葉からできています。葉は一枚の葉片からなるものを単葉、複数の葉片からなるものを複葉といい、複葉の一枚一枚の葉片を小葉または羽片といいます。複葉はその小葉の出方で、いろいろ分けられます。

 葉が枝についている状態をよく見ると、交互についている(互生)、二枚の葉が向かい合ってついている(対生)、二枚以上の葉が輪状についている(輪生)などがあります。葉の縁(葉縁)も庭樹によって特徴があります。鋸の歯のようにギザギザのあるものや全くないものなどです。カクレミノ、ヒイラギ、キヅタ、ヒムロ、イブキなどは、1本の樹に葉の形が二種類あります。庭樹の名前を、これらの葉や花の特徴とともに覚えていると、庭樹の管理も楽しいものになってきます。

 ←イブキの鬼葉

 ←ヒイラギの丸葉

 落葉広葉樹は秋に葉が散ります。しかしクスノキ、ツバキ、カシ類などの常緑広葉樹は、4月から6月にかけて新しい葉が出始めると2、3年生の古い葉が落ちます。クスノキやシラカシは今までつけていた葉を1週間ほどの間に落とし、完全に新旧交代します。しかし、ツバキやアラカシなどは2,3年生の古い葉が時間をかけて落ちていきます。日本に自生する針葉樹は、カラマツを除けば常緑樹ですが、これらは10月から12月にかけて落葉します。クロマツの場合、春新芽がでて、2年半後の秋に落葉します。アカマツは1年半後の秋に落葉します。

 すべての枝について古い葉が落ち、新梢や昨年度の葉が健全なら正常です。季節外れの落葉は根系不良、病虫害を疑ってください。

 5.枝

 葉のついている枝条と、幹からでている樹枝とに分けられます。枝条の葉のついている部分を節といい、節と節との間を節間と呼びます。節間が長く伸びた枝を長枝、節間が著しく短くなった枝を短枝といいます。枝の出方にも、葉と同じように互生、対生、輪生があります。徒長枝は節間が長くなります。枝に発生する病害も多くあります。萌芽枝と呼ばれる「ひこばえ」が株もとから出る場合があります。放置しておくと、本来の庭樹が弱ってきますので、発生しだい株元から切り取ります。が、同じ場所で庭樹の世代交代をする場合、大きく育てていくことも必要です。土壌中に肥料分が多い場合あるいは日陰地で生育している庭樹は節間が長くなる傾向にあります。

 6.幹

 幹の一番外側は樹皮で囲まれています。クロマツのように深い裂け目があり厚い樹皮を持ったものから、ツバキ、カエデ、サルスベリのように薄い樹皮のものまでいろいろあります。樹皮が薄いと幹が日焼けを起こしやすいので樹幹に直射日光が当たらないように注意する必要があります。

 湿度の高い日当たりの悪い庭に植えられた樹勢の弱った庭樹には、ウメノキゴケなどの地衣類(菌類と藻類との共生する隠花植物)が着生する場合があります。梅や松に地衣類が着生しているといかにも古風で値打ちがあるようですが、庭樹にとって気象条件や庭樹の根系状態が悪いことを示しています。

 樹幹中を樹液が流動する早さは一時間当たりに50cmほどです。樹液の流動を樹幹外部から直接見たり聞いたりすることはできません。もちろん聴診器を当てて樹液流動を聴くこともできません。「音」は耳には入ってきますが、風による樹幹の揺れや、聴診器が樹幹をこする音です。

 7.根

  庭樹の枝先下近くの庭土を掘ってみると、地表から20〜60cmほどの深さのところから、黒い褐色の太さ数mmの細い根が出てきます。これらの根の先端は常に細胞分裂を繰り返し、伸長している白い部分があります。これは吸収根といわれ、土壌中の水分や養分を吸収するだけではなく、土壌中の酸素も吸収しています。細い根っこから吸収された水分や養分は太い根へ移動し、樹液として幹、枝を通って葉まで達します。

 根の伸長成長はこの根端組織によって行われており、乾燥、過湿、空気不足など根にとって生活条件が悪いところでは伸長成長は停止し、根はひろがりません。このような場所では水分・養分などを吸収する根表面の面積が広がらないので、庭樹の正常な成長は阻害されます。庭樹を植えかえるとき、剪定鋏や鋸で太い大きな根をよく切ることがあります。これらの0.5〜2cm程度以上の太い根は庭樹が倒れないように、樹体を支持する働きがあります。細い根、太い根をいかに健やかに育てるかが、庭樹の生育に大きく影響を与えます。

 水分・養分を吸収する細い根は、地表から30〜50cmほどの深さのところを、ほぼその庭樹の枝の先端あたりまであるいはそれ以上に伸びているといわれています。そしてその伸びた先端の方で水分・養分などの吸収を行っています。しかし庭樹の場合、家屋、塀、石組など、あるいは隣の庭樹の影響を受け、必ずしもそのようになっていない場合もあります。太い根は地表部ばかりでなく、樹幹直下50cm以上深いところまでも直根を伸ばし、地上部の大きな樹体を支えています。水分や養分の吸収する働きはほとんどありません。

 根には菌類が着生して、生活している植物が多くあります。菌類が根の外部をつつむ外生菌根と、根の組織内部の中で生活している内生菌根とがあり、また別にVA菌根もあります。菌類は庭樹の根から炭水化物など養分を得て生活し、また菌類は根の根毛のような働きをし、土壌中から水分・養分を吸収し根に与えます。外生菌根は針葉樹やブナ科、カバノキ科樹木に普通にみられ、内生菌根はツツジ類、カエデ類などの仲間にみられます。きのこのマツタケはアカマツの根に付く外生菌根の一種としてよく知られています。菌根が形成されることによって、庭樹はより健全に生育することができます。除草剤、殺菌剤などの農薬や化成肥料の多量の投与は、これらの菌類の生育を危うくします。

 ←アカマツの菌根

 ←ウバメガシの菌根

 幹に樹皮があるように、根にも樹皮があります。しかしその厚さは根の方が地上部より薄く、剥離し易く、皮目も明瞭です。その色調は褐色から暗褐色で、地上部の幹ほど変化に富んでいません。そのため根だけで、庭樹の種類を判定する事はほとんど不可能です。皮目の細胞は空気で満たされており、根の呼吸作用に大きな役割をはたし、土壌中での酸素と炭酸ガス交換の働きを行っています。

 老衰した庭樹や病虫害などで衰弱した庭樹の回復法として、根切りや根継ぎが行われる場合があります。根切りは、文字どおり根を切ることです。根には元々根が損傷老化したとき、新たに元気な根を出さす働きがあります。この原理を利用した方法です。根継ぎには衰弱・老齢樹の回りに健全な樹を植えて寄せ継ぎのような方法で継ぐ場合、衰弱・老衰した樹の根を掘り出して、腐朽、枯死した根を取り除いた後若樹の根を継ぐ方法などがあります。しかしいずれにしても、むずかしい大がかりな仕事になり相当高度な技術が必要です。

 根の勢いが強いといくら枝を切り詰めても成長を抑制することはできません。このようなときは枝を切り詰めるよりも根を切り詰める方が目的を達成しやすいです。


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T 庭樹の組織とその働き
U 庭樹の環境
V 樹勢回復
W 肥料
X 多種類の庭樹に共通して発生する病害
Y 多種類の庭樹に共通して発生する害虫
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