V 樹勢回復

 美しい樹形や花を楽しむためには、常日頃から庭樹をよく観察し、いつも健全な状態に保っておく必要があります。万が一樹勢が弱ってきたときに、軽症の間に手当ができるように心がけておきます。

  見 出 し
1.環境改善
3.気象害対策
 1)日照
 2)土壌改善
 2)低温
 3)高温
 4)過湿
2.病虫害対策
 5)乾燥

1.環境改善

 1)日当たりと風通し改善

 多くの庭樹は、日当たりを好む陽樹です。枝葉が繁茂しすぎると、日照不足の枝葉ができ、内枝が枯れ込んできます。また庭にあれもこれもと多くの庭樹を植え込むと、隣接する庭樹は日陰になります。これらがひどくなってくると日当たりだけではなく、風通しも極端に悪くなり、病原菌や害虫の温床になります。枝葉が繁茂し、密生してきたら樹冠内部まで充分に日光が差し込むように枝葉を透かすと、日当たりも風通しも良くなり、病虫害の発生は少なくなります。

 2)土壌改善

 前にも述べたように、庭樹にとっては地上部とともに地下部も非常に大切な場所であり環境です。根は土壌中の酸素を使って呼吸するとともに、養分や水分の吸収作用も行っています。根の活動の場である土壌の環境が悪いと、庭樹は健全には生育できません。土壌pH計、EC(電気伝導度)計などで土壌の性質を調べ、不適切な値が出てきたら腐葉土、堆肥などをすき込んで、土壌改良を行い空気、水分のバランスのとれた土壌にします。それとともに人による踏み堅めを防ぎます。また土壌pHは5.5〜6.5の間に保つようにします。pHの数値は、数字が小さくなるほど水素イオン濃度が大きくなります。数字が1異なると水素イオン濃度は、10倍異なります。日本の平均的な土壌pHは、5.5〜6.5の範囲です。酸性化した土壌には苦土石灰を1m2あたり100〜200gを全面散布し、深さ40〜50cm以上の土とよく混ざるように透き込みます。アルカリ性化した土壌には、リンサン石膏または硫黄華100g/m2を少量づつあるいは木酢液・竹酢液等を10倍に薄めて1m2あたり10g施し矯正します。またはpH無調整のピートモスを鋤き込みます。充分散水し、1ヶ月後にpHを再調査します。

 3)枯れ枝・枯れ葉・落葉の除去

 時期はずれの葉枯れ、落葉はその原因を追究するために、詳細に観察する必要があります。枝枯れ性病害に罹った枝、葉枯れ性病害に犯された病葉、害虫による食害など多くあります。健全な枝葉と比べ、病原菌の有無や病名を調べます。また落葉にも多くの病原菌がついています。伝染源とならない間に、これらの枝葉を切り取ったり、集めたりして土中深く埋めるかまたは焼却処分に出します

 4)腐朽部の処置

 庭樹が大きくなって幹や枝が太ってくると、いつの間についたのか、傷が所々に発生しているのに気がつきます。庭樹の小さいときに付けた傷や、剪定した枝から侵入した腐朽菌による腐れなど、あるいは害虫による傷が基で発生した腐朽などいろいろ原因が考えられます。このまま腐朽部を放置しておきますと時間とともに腐朽部は大きくなり、枝や幹を腐らし、ついには庭樹全体を枯らしてしまう恐れがあります。見つけ次第早急に手当を行います。枝や幹の材内に侵入した腐朽菌を外から完全に殺菌することは不可能です。したがって、腐朽の進行を少しでも遅らせることに力点を置きます。まず柔らかく腐朽した部分をできる限り取り出し、少し堅い部分もノミなどで削り取り、腐朽部に雨水が溜まらないように工夫し、できる限り腐朽部が乾燥するように雨水の侵入、風通しなどに注意します。きれいに清掃し、ペースト状の殺菌剤あるいは墨汁を2、3回重ね塗りを行います。神社仏閣の大きな樹の腐朽部にはウレタンなどを充填することがありますが、庭樹の場合特に行う必要はないでしょう。倒伏の心配のある庭樹には、支柱を立てます。支柱は一本ではなく、鳥居型の2本足あるいは三方向から支柱をする3本支柱を行い、庭樹の風によるねじれを防ぎます。

2.病虫害対策

 1)病虫害発生時の対応

 庭樹も生き物です。したがって環境が悪くなると病気になったり、害虫が発生したりします。しかし、マツクイムシによるマツノザイセンチュウ病以外は、被害を受けたその年に枯れてしまうほど激しい病虫害はありません。何年も続けて病虫害の発生を繰り返していると樹勢衰弱につながり、他の病虫害を併発しやがて庭樹は枯損します。病虫害の早期発見を行い、被害の軽い間に防除するのが基本です。被害軽微の間は、防除も楽です。病気にかかった枝葉を取り除き、土中深く埋めるか焼却処分に出します。また卵からかえった害虫は一個所にかたまっていることが多く、はさみなどで枝葉を切り取り、これも焼却処分に出すかあるいは足で踏みつけ殺します。病虫害の発見が遅れると被害を受けた枝葉も多くなり、また害虫も大きくなり庭樹全体に分散し防除が困難になります。このようなときには、農薬の助けを借りなくてはならなくなります。最小限の農薬散布で済まされるように病虫害の早期発見と、その病虫害にあった農薬の適正な使用方法をよく調べてから散布してください。

 2)越冬病害虫の防除

 冬は低温のため、病原菌や害虫の活動が鈍り、被害が目に付くことはまずありません。しかし落葉した庭樹の枝、幹のわずかな隙間、落葉の下に病原菌や害虫が入り込み冬の寒さをしのいでいます。また病原菌は胞子、害虫は卵やさなぎとなって、耐寒性を高め越冬します。このため、一般の農薬では効果が上がらなくなっています。落葉期の間に、枝幹についた害虫の卵、イラガのさなぎや、落葉の下にいるスカシバのさなぎなどを見つけて殺しておきます。枯れ枝、枯れ葉の取り除きも行い、庭を衛生的な環境にしておきます。

 薬剤散布はもっぱら春の病虫害の発生を防ぐ、予防散布となります。害虫は機械油(マシン油)剤、害虫と病原菌には石灰硫黄(イオウ)合剤などの農薬があります。適用庭樹が限られていますので注意してください。これらは油剤であったり、イオウを含んでいるため噴霧器を腐食させたりしますので、取り扱いに十分注意してください。また常緑樹には特に薬害がでやすいものがあります。目立たない一部の枝葉に散布して、薬害がでないことを確認して全面散布を行ってください。新芽が動き、葉が開き出すと、薬害がでやすくなりますので、散布時期に注意する必要があります。

3.気象害対策

 1)日照

 サルスベリ、カエデ、ツバキなどの仲間は樹皮が薄いので、幹が日焼けをおこし、南西側の樹皮が枯れ、腐朽してくることがあります。整枝剪定で急激に樹幹に日が当たらないように注意します。

 夏期日照りが続くと、葉の縁から枯れ込んでくることがあります。落葉広葉樹の場合、枯れはじめて日が経つにつれて内側に向かって巻き込みますが、全体が枯れてもいつまでも枝についている場合が多いです。この場合、根が相当弱っています。散水は毎日少しづつ行うのでは、根系が発達している地下部まで十分浸透しません。数日おきにたっぷりと地下深く浸透するように水やりを行います。

 直射日光により、裸地の地温はどんどん上昇します。地温上昇や表土の乾燥が激しいときには、庭樹樹冠よりも広く藁、バーク堆肥、木材チップなどで地表を覆い地温上昇、乾燥を防ぎます。日照不足で野菜、稲などが不作になる年がたびたびありますが、庭樹にとって、日照不足で枯れることはほとんどありません。しかし、庭樹は相当衰弱しますので、以後の管理に注意します。一部枝葉の枯れが発生する場合には整枝剪定を行い、周辺および上方からの散光をうまく利用します。

 2)低温

 自宅近在の野山に自生している樹木は冬期の低温障害にあうことはほとんどありません。しかし、自分の好みに合うからといって、無理して南方系の樹木を庭樹として導入しても、冬の寒さにあうと、葉が枯れ込んでくることがよくあります。室内の洋ランや観葉植物などは鉢植えされ、暖かい室内を日光を求めて移動させることができますが、庭樹の場合そうもいきません。

 低温にあうと葉が黄褐色になり、春になっても落葉せず、見苦しい状態が続くばかりでなく、樹勢衰退にもつながります。防ぐ方法としては庭樹の上からネットなどをかぶせることしかなく、景観上良くないばかりか、ネットをかぶせ固定することも大変な仕事です。耐寒性をつけるため窒素肥料を控え、カリ肥料を少し多めに施肥します。また、低温により土壌中の水分が凍り付き、根が水分を吸収できなくなります。このため乾燥害と同じ症状を示します。

←低温障害にあったアラカシの葉

 3)高温

 低温障害に比べ、高温障害は日照量と深い関係にあります。庭樹のすぐとなりがコンクリ−ト壁であったり、アスファルト道路であると、これらからの照り返しで、垣根の外側が葉焼けを起こすことがあります。壁や道路に散水することによって、壁や道路の温度を下げます。

 4)過湿

 長雨が続くと土壌中に水分がたまり、酸素量が少なくなってきます。根腐れの基です。排水の悪い場所では、地下深く浸透するよう排水よく土壌改良するのが基本ですが、雨水が地下にしみこむ前に、側溝などに流れ出るように工夫します。水がたまりやすい箇所には、暗渠を掘ったり、植え穴を大きく深く掘り、より早く雨水が流れ去るように工夫します。

 5)乾燥

 年間日照時間の長い年は、乾燥の激しい年でもあります。鉢植えの場合絶えず散水に注意していなければ、すぐに鉢内が乾燥し植物が萎れ枯れてしまいます。ツツジ類など浅根性の庭樹は乾燥が続くと枯れる場合がありますが、おおきな庭樹の場合根系が弱っていない限り乾燥で枯れると言うことはまず無いでしょう。しかし、土壌が乾燥することによって、庭樹の根系先端が傷み、枝葉が弱ってくると病害、虫害の発生の誘因になります。乾燥と過湿の差が大きいと庭樹はこの変化に対応しきれなくなります。このため乾燥の激しいときは、樹冠下に藁、上木の樹種と異なった庭樹の落ち葉、バーク堆肥、木材チップなどを敷き、土壌の乾燥や地温の上昇を防ぎます。

 ←乾燥害をうけたツツジ類


  はじめに
T 庭樹の組織とその働き
U 庭樹の環境
V 樹勢回復
W 肥料
X 多種類の庭樹に共通して発生する病害
Y 多種類の庭樹に共通して発生する害虫
Z 農薬
[ 整枝剪定
\ 移植
] 庭樹の増殖
]T もっと詳しく知りたい方に
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