W 肥料
  見 出 し
1.庭樹の生長 3.肥料の種類と施肥方法
   1) 緩効性肥料と速効性肥料
2.肥料の成分と過剰症及び欠乏症  2) 有機肥料と無機質肥料
 1) 主食的な成分  3) 単肥と複合肥料
 2) 副食的な成分  4) 施肥の場所と方法
 3) ビタミン的な成分  5) 施肥と病害虫

 1.庭樹の生長

 森や林、山の場合、落葉落枝が微生物によって腐り、樹々の肥料となり、再び根から樹体内に吸収されます。しかし、庭の場合落葉落枝のほとんどはごみとして庭から持ち去られています。このため外部からなんらかの肥料を補給し続けなければ庭樹の生育が悪くなります。しかし、施肥の仕方を誤ると庭樹を軟弱にし、病害や虫害に対する抵抗力の低下などを誘発するだけでなく、多量の施肥をすると肥料焼けといって枯らしてしまうこともあります。肥料にはいろいろな成分があります。種類や働きなどをよく理解し、目的に合わせてバランスよく施肥する必要があります。一つでも不足するとその少ない肥料成分に支配され、アンバランスな生長をしてしまいます。またバランス良く施肥されていても、根系が傷んでいると十分な養分吸収ができません。施肥とともに根系の状態にも注意しましょう。

 2.肥料の成分と過剰症及び欠乏症

肥料成分には人間の主食のように、大量に必要とする成分と副食的な成分やビタミンなどのように微量だが不足すると健全な生育が阻害される成分に分けられます。

 1) 主食的な成分(多量元素)

 庭樹が生育するためには大量に必要とするので、不足しがちになります。欠乏すると健やかな生育ができず、様々な症状が出ます。窒素(N)燐酸(P)カリウム(K)があり、これらは三大要素ともいわれています。  窒素(N):施肥した肥料が土壌中でアンモニアイオンなどに分解されてから吸収されます。無機の窒素化合物を吸収し、樹体内で有機窒素化合物を合成します。すなわち窒素は庭樹の蛋白質、アミノ酸、核酸を構成している成分で、葉肥とも呼ばれ、葉や茎などの生育を促進し、葉の色を濃くします。窒素の過剰施肥は庭樹の過繁茂を招き、葉、茎が軟弱になり、病虫害にかかりやすくなったり乾害、寒害を受けやすくなります。また化成肥料を多量に施肥すると庭土が酸性化したり、高塩類化したりするなど、庭土の老朽化を促進します。逆に欠乏すると葉色が悪くなり、生育不良になります。庭樹の場合、欠乏症が現れるのは、庭土に窒素が欠乏してから2,3年たってからです。欠乏症状が現れたときは樹勢はすでに衰えているので、早急に薄い化成肥料を数回施肥あるいは尿素やアミノ酸を含んだ葉面散布肥料の葉への散布を行います。併せて緩効性肥料も施肥します。  燐酸(P):遺伝子の本体である核酸、細胞膜などを構成している燐脂質などの成分や、エネルギーの運搬や貯蔵などをつかさどっています。燐酸は実肥とも呼ばれ、茎の枝分かれや葉を増やし、開花や結実を促進し、根を健全に伸張させます。窒素やカリに比べ燐酸は過状施用の害が現れにくく、施肥効率の悪い成分です。しかし、過状施用すると結実が早くなりすぎたり、鉄、亜鉛、銅などの欠乏症を誘発するといわれています。庭樹体内の燐酸が欠乏すると根が伸びずまた葉は小型化し光沢が悪くなり、暗い青銅色となります。燐酸は樹体内で移動しやすいので、欠乏すると古い葉から新しい葉に移動するため、欠乏症は古い葉の葉脈から現れます。毎年果実を採取するウメなどに欠乏症が出やすいので注意します。花を観賞した後は、摘花、摘果を行い、無駄に肥料が結実の方に費やされないようにします。燐酸は土壌中の鉄やアルミニュウムと結合し、根から吸収されない化合物になります。火山灰土壌はアルミニュウムが多く含まれているため、燐酸欠乏症が現れやすい土壌です。腐葉土などと混ぜて施肥すると肥効が上がります。欠乏症が現れたら、第一燐酸カリウムまたは第一燐酸カルシュウムの0.3〜0.5%液を葉面散布すると早く回復します。  カリウム(K):窒素や燐酸のように植物体を作る成分ではなく、酵素の活性化因子として働き、庭樹の生理作用を調整し、根や茎葉を強くするため、根肥とも呼ばれています。また耐病性を高め、乾害、寒害への抵抗力をも高めます。カリウムは窒素、カルシウム、マグネシウムなどと互いに庭樹への吸収を妨げあう拮抗作用があるので一度に過状に施肥せず、2、3回に分けて行います。欠乏すると、古い葉の先端が黄色くなり、やがて褐色になり、葉焼けに似た枯れ方を示します。

 2) 副食的な成分(中量元素)

 カルシウム(Ca):庭樹の細胞の中で細胞膜の構造や機能保持を行っています。カルシウムは庭土の土壌pHを5.5〜6.5までの範囲に矯正する働きがありますが、多すぎると土壌が中性あるいはアルカリ性になり、庭樹の生育が抑制されます。カルシウムは庭樹の樹体内で移動性に乏しいので庭樹の先端から欠乏症が発生します。葉の先端が黄白色になり、次第に褐色になって周辺部が枯れてきます。
 マグネシウム(Mg):葉緑素の成分の一つで光合成を助けるとともに、酵素反応の活性因子でもあります。苦土石灰や水酸化マグネシウムを過状に施肥すると庭土の土壌pHがアルカリ性になり、ホウ素やマンガン、亜鉛の欠乏症が起こります。マグネシウムは成長の盛んな新しい葉に移動しやすいので、欠乏症は下葉の古い葉が緑色を失い、黄色くなります。
 イオウ(S):アミノ酸構成成分の一つです。イオウを含む肥料を多く用いると庭土が酸性化し、水の多いところでは硫化水素となり庭樹の根系を痛めます。また病気に対する抵抗性がなくなるといわれています。欠乏すると下の古い葉から全体に黄色くなってきます。また新しく出る葉が小さくなります
 鉄(Fe):葉緑素の生成に大きく関与しています。鉄が庭樹によって過状吸収されることは、ほとんどないといわれています。庭土の中には庭樹にとって十分な鉄がありますので、欠乏症状は起こりにくいでが、庭土が中性、アルカリ性になったときに起こり、葉が全体に黄色くなってきます。

 3) ビタミン的な成分(微量元素)

 マンガン(Mn)ホウ素(B)亜鉛(Zn)銅(Cu)モリブデン(Mo)コバルト(Co)などがあります。これらの成分は、必要量はごくわずかですが、欠乏すると健全な庭樹には生育しません。人間にとっての各種ビタミンと同じような働きをします。以上の成分は水や、根が分泌する根酸と言われる酸に溶けたイオンとして根から吸収されます。
 このほかに蛋白質、脂質、炭水化物などの主要構成成分である炭素(C)は炭酸ガス(CO2)の形で葉から吸収され、酸素(O)は呼吸作用で主に葉と根から吸収されるほか、水素とともに水(H2O)として根から吸収されますので肥料としては与えません。また庭樹は生き物ですから、酸素を吸収し、炭酸ガスを排泄していることにも注意したいです。

3.肥料の種類と施肥方法

 1) 緩効性(かんこうせい)肥料と速効性肥料

 緩効性肥料は施肥後徐々に効いて、効き目が長続きする肥料で、遅効性肥料とも呼ばれています。速効性肥料は水に溶けやすく、施してからすぐに効き目が現れますが、効果は長続きしません。したがって定期的に施肥します。緩効性肥料には油かす、骨粉、魚粉、米糠、牛糞、堆肥などの有機質肥料の多くと熔燐(熔成苦土燐肥)などや化成肥料の表面をコーティングし肥効の時間を人工的にコントロールしたものなどがあり、固形タイプのものが多いです。速効性肥料はリン酸肥料以外の硫安(硫酸アンモニウム)、硫加(硫酸カリウム)、尿素など多くの化成肥料で、液状タイプも多くあります。緩効性肥料と速効性肥料とをうまく組み合わせて時期をずらすなどして施肥することを考えてください。

 2) 有機質肥料と無機質肥料

 有機質肥料は、動物特に家畜の排泄物あるいは落葉落枝、ワラなどを腐らせたもの、ナタネ種子、綿の実、ダイズやイワシの絞りかすなど生物起源の肥料だけでなく一部化学合成されたものもあります。
 無機質肥料は、チリ硝石、リン鉱石などに化学薬品を加えて、反応させて作った化学肥料や貝殻、貝化石、石灰石などを乾燥粉砕しただけのも含まれます。

 3) 単肥と複合肥料

 化学肥料で成分が一つだけなら単肥、成分が二つ以上含まれている肥料は複合肥料といいます。特に単肥の場合他の種類の肥料と組み合わせて使う場合がありますが、肥料の種類によっては化学反応をおこし、庭樹に悪い作用をしたり、肥料成分がなくなったりします。鶏糞、堆肥、硝安、硫安などアンモニア性窒素肥料に消石灰、生石灰、石灰窒素などアルカリ性肥料を混ぜるとアンモニアガスが発生し根に悪い影響を与えます。有機質肥料に尿素や硝安の組み合わせもよくありません。

 4) 施肥の場所と方法

 庭樹が肥料成分を吸収する根は、細根といって、根の先端部近いところです。したがって幹のすぐ近くに施肥してもほとんど効果はありません。庭樹は一般に枝の先端のほぼ直下あるいはそれ以上に、根が張っているといわれています。幹を中心に枝下の円を描き、円の外側に直径方向に20-30cmの溝を掘り施肥を行うと効果的です。またジンチョウゲ、ツツジ類など潅木類は粒状肥料をばらまき、スコップなどで土壌浅く埋め込むように施肥を行います。
 油かすに骨粉を含んだ有機質肥料はいろいろな微量成分も含んでしかも緩効性肥料であるので、定期的に施肥していると、庭樹の肥料としては効果的に効いてきます。肥料に含まれている成分が水に溶け出して根から吸収されますから、できるだけ水に溶けやすいように庭土と混ぜるようにします。春の芽生えまでに十分根から吸収される状態にしておかなければなりません。そのためには秋から初冬にかけて緩効性肥料を施肥するのがよいでしょう。速効性肥料なら春先根の活動が始まってからでよいでしょう。花や実を楽しむ庭樹には、カリウムやリン酸成分を多く含んだ骨粉等を多めに施します。
 施肥方法について、いろいろな用語があります。
 元肥 庭樹を植えるときにその植え穴の底に緩効性肥料をいれ、植え痛んだ樹勢の回復を促進させます。肥料と根が直接接触すると根が傷みますので、元肥の上に少し土を戻すようにします。
 お礼肥 美しい花を咲かせてくれたお礼として、花の終了直後に施肥する肥料です。またウメなど実をも収穫する庭樹は、収穫直後に燐酸成分を多く含んだ肥料を施肥します。開花結実に使った多くの養分を補給し、翌年も立派な花を咲かせ実をならせるために与える肥料です。庭樹の樹勢回復をはかるために速効性肥料を用います。
 追肥 一度に多量施肥しても庭樹は養分を吸収できないばかりか、根を弱らせあるいは根を痛め、ひいては庭樹全体が枯れてしまいます。このため肥料を数回に分けて施肥する必要があります。最初に施すのが元肥、後から施すのを追肥と呼び、緩効性肥料と速効性肥料とを組み合わせて施肥すると効果的です。
 寒肥 春の旺盛な生育期に効き目が現れるように、冬の間に施す肥料のことを呼びます。カエデやウメは根の活動が早く始まりますので、年末までにはすましておきます。したがって速効性肥料よりも緩効性肥料が適しています。
 置肥 特に鉢植えの場合、鉢の回りに置いて散水のたびに成分が水に溶けて肥効が出るようにする肥料です。
 水肥 水やりがわりに施す薄い液体肥料です。育苗期や肥料切れを起こしたときに施します。
 これらの肥料も根系が健全であって、初めて施肥効果をあらわします。庭樹の管理不十分なため根系が傷んでいる場合、肥料の種類、施肥方法、施肥時期など十分に検討する必要があります。根系を健全に成育させるまでは、薄い、弱い肥料を数回に分けて施肥します。「胃腸をこわした病人には、まずお粥から」が基本です。

 5) 施肥と病虫害

 庭樹を健全に育てるために肥料を与えますが、過剰に与えると庭樹を弱らすだけでなく枯らしてしまう場合もあります。特に窒素系肥料を多く与えると枝葉が軟弱になり病虫害に侵されやすくなります。また完全に熟していない堆肥や粗大な枝を庭土に埋め込むと、紋羽病などの病害やコガネムシの幼虫(ネキリムシと言われている)が発生しやすくなります。庭土の中から肥料成分を抜き取ることは大変困難です。少なめに施肥します。
 以上のことから、最も一般的な施肥は油粕と骨粉を混ぜ充分に発酵させた「発酵油粕」を樹冠下に40〜50cm間隔に深さ20〜30cmの穴を掘り埋めます。このとき穴の中に小さく割った木炭と牛糞堆肥を一握りずつ混入するとよいでしょう。毎回場所を変えて穴を掘り、時にはより深く掘って木炭を多量に入れてください。


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