はじめに

 庭の樹の健康状態を正確に調べるには、いろいろな実験装置や高価な機械が必要です。これらの装置・機械を働かせる技術や、出てきた分析数値を正しく判断する知識も必要です。しかし樹木の健康状態を正しく判断する知識は、樹木の野外でのあるがままの姿をよく観察することに立脚しています。精密な分析資料だけで判断するよりも、野外で樹木を見るだけの方が、本当の庭樹の健康状態を知るのに役立つでしょう。もちろん野外での観察だけでは、判断しきれないことがたくさんあります。野外観察の補助手段として観察道具を用いた観察を行うことにより、健康状態をより正確に判断できます。私たちが用いる観察道具は、虫眼鏡(天眼鏡、ルーペといわれているもの。倍率が10倍前後あればよい)、移植ごて(庭いじりするときに使う小さなスコップ)、シャベル(庭樹を植え替えるときに使う大きなスコップ)があれば、野外観察の道具として充分役立ちます。低倍率の顕微鏡(子どもが小学生や中学生の時に、理科の実験などのために買い与えた顕微鏡)がもしあれば、病原菌を顕微鏡を通してみるといろいろな形の胞子や菌糸を観察でき、病害に対しても関心がわきます。しかし、何をおいても、野外で庭樹をよく観察することが一番です。
 庭樹に限らず、人間の病気のことでも、診断はその人の体をよく見ることから始まります。病院へ行くと採血、採尿から始まりCTスキャン、心電図、超音波検査などいろいろな機械で、身体の具合を正確に測定されます。しかしその人の健康状態は、単に測定値の総合だけで判断できるものではありません。高価な精密機械による検査の機械的な判断よりも、また細かく細分化されたそれぞれの分野の専門医の判断よりも、その人の健康状態を長く診察し続けている近くの「かかりつけの医者」の判断の方がよいでしょう。「かかりつけの医者」が、測定値を参考にしながら判断することが、より正確な診察ができると思います。
 庭樹にとっては、あなたが「かかりつけの医者」です。今の知識だけでは、ひょっとしたら、あなたは「やぶ医者」かもしれません。しかし庭樹をよく観察し、少し基礎的な知識を理解しさえすれば、あなたは立派な庭樹の「医者=樹木医」になれます。
 医者は悪いところを治療するだけが役目ではありません。常日頃の健康状態を維持できるように、健康管理するのも役目です。そのためには何はともあれ、庭の樹々をよく観察してください。庭樹が病気になり長期療養を繰り返さないように、毎日の健康管理を行ってください。そして「樹木医」として庭樹ばかりでなく街の緑をも守り、緑の環境維持に努めてください。


  はじめに
T 庭樹の組織とその働き
U 庭樹の環境
V 樹勢回復
W 肥料
X 多種類の庭樹に共通して発生する病害
Y 多種類の庭樹に共通して発生する害虫
Z 農薬
[ 整枝剪定
\ 移植
] 庭樹の増殖
]T もっと詳しく知りたい方に
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