X.多種類の庭樹に共通して発生する病害

 寄生性、伝染性の強い病原菌は比較的少なく、樹木にとって生育環境が悪くなったため成育が衰え、なおかつ病原菌の密度が高くなった場合に、病害が発生します。したがって、生育環境(地上部:寒暖差、日照、通気、空間等 地下部:通気、排水、保水、養分、地温差、乾湿差、PH等)を改善し、被害病枝葉、落葉落枝や枯葉、枯枝を取り除き病原菌の密度低下を行うことによって、多くの病害は防げます。

  見 出 し
 
1.根系
 
 
 2)紋羽病類
 
 
 4)根系腐朽
 
2.枝・幹・樹皮
 
 2)こう薬病
 3)地衣類
 
 
 5)材質腐朽
 
3.葉  
 
 
 
 4)紫かび病
 
 5)すす病
 
 6)さび病
 
 7)もち病
 
 

1.根系

 1)ならたけ病:土壌伝染性病害 病原菌はナラタケ

 多くの広葉樹およびマツ類、ヒノキ類に発生します。根系が菌に侵され衰弱、腐敗、枯死します。若齢樹、老齢樹では早く、壮齢樹では数年にわたって衰退枯死していきます。寄生性の強い菌ではなく、衰弱した樹木の根系にとりつき、樹木の衰退に応じて、徐々に樹勢を弱めていきます。葉は次第に小型化し、黄味を帯びついにはしおれて枯れます。乾燥による枯れと類似していますので、注意してください。罹病樹地際部の樹皮内側には、きのこ臭のする白色、扇状の菌糸膜ができます。被害根系や地際樹皮の周囲には、黒色針金状の根状菌子束が形成され伝染源となります。また、秋には地際部から淡褐色のきのこが多数群生し、胞子を飛散させ伝染源となります。ナラタケ菌は衰弱した根系や切り株で繁殖し、隣接する樹木などに感染していきますので、被害樹の根系、切り株はきれいに除去し、周辺の土壌消毒を行った後に、あらたに植栽してください。土壌消毒はカーバム剤(NCS)などで行いますが、隣接する樹木に薬害が発生しないように使用方法に充分注意しなければなりません。樹木の健全育成に努めることによって、本病の顕在化を防ぐことができます。ナラタケと類似のキノコナラタケモドキ(かさの柄につばがない)もナラタケと同じ土壌伝染性病原菌です。貴重木に対しては、根部の外科手術を行います。

 ←ナラタケ

 ←キノコナラタケモドキ

 2)紋羽病類:土壌伝染性病害 病原菌は糸状菌(かび)

 針葉樹、広葉樹ばかりでなく、イネ科以外の草本類も被害を受けます。根系が侵され、地際部の樹皮が紫褐色から白色のフェルト状の菌糸膜でおおわれます。この時すでに根系は激しく被害を受けており、回復は不可能です。ならたけ病と同じく、土壌伝染性病害のため、移植時に十分注意し良く根系を観察し、被害樹を持ち込まないようにしてください。白紋羽病と紫紋羽病とがありますが病原菌は別です。剪定後の枝葉、チップ等未分解有機質は病原菌の栄養源となりますので、土壌中に鋤き込まないようにします。

ヒサカキ_白紋羽病←ヒサカキ白紋羽病

 白紋羽病:被害樹の根の樹皮がやや肥大し、縦に数条の亀裂が入ります。また樹皮表面には白色から灰白色のカビ(菌糸膜)で覆われます。これらのカビには土壌が付着したり、菌糸の太い束が迷走することがあり、このため灰色になります。被害を受けた根は褐変腐敗し異臭がします。被害樹は比較的簡単に抜き取ることができ、抜き取った根は、芯(木質部)だけが付いてくる場合が多くあります。次の紫紋羽病に比べ、症状の進展は急で、地上部全体が急激に萎れて枯れます。被害樹を発見したら直ちに被害樹の小さな根系も含めて、ていねいに掘り取り焼却処分出します。また、掘り取った跡は土壌消毒するか、新しい土壌と入れ替えて、健全な木を移植します。罹病樹を一旦庭に持ち込むとその後の防除対策に苦慮します。

 紫紋羽病:白紋羽病に比べ、症状の進展は遅く、白紋羽病の症状よりもならたけ病の症状を示します。被害樹は次第に葉が小型化し、ついには庭樹全体が枯れます。病原菌は、Helicobasidium属菌で白紋羽病菌のRosellinia属菌と異なります。被害樹の根系や地際部には、紫褐色の堅密なカビ(菌糸膜)で覆われます。これらの症状が現れたときには、すでに激害で、治療回復の手だてはありません。被害樹の発見後の対策は、白紋羽病と同じ方法を行います。  

 3)根頭がんしゅ病:病原菌は細菌

 根に球形〜半球形の大きなこぶ状組織が多数形成されます。初期のこぶは比較的軟らかいですが、やがて堅くなり、表面は褐色〜黒褐色に変色します。根の生長とともにこぶ状組織は、数・大きさとも増加します。被害樹はすぐには枯れませんが、樹勢衰退し、徐々に葉が小型化、早期落葉し枯死します。ならたけ病、紋羽病症状と類似しています。被害樹の根系をていねいに掘り取り、カーバム剤(NCS)剤で土壌消毒します。

←サクラ類根頭がんしゅ病

 4)根系腐朽

 乾燥・根切り虫・薬害(過施肥、農薬)などによる根系衰弱・障害が発生し、菌類、線虫類などが根系に進入し腐朽を起こします。被害が確認されたときには、症状が進んでいるため発生原因の特定が難しいです。

 庭樹が大きくなって幹や枝が太ってくると、いつの間についたのか、傷が所々に発生しているのに気がつきます。庭樹の小さいときに付けた傷や、剪定した枝から侵入した腐朽菌による腐れなど、あるいは害虫による傷が基で発生した腐朽などいろいろ原因が考えられます。このまま腐朽部を放置しておきますと時間とともに腐朽部は大きくなり、枝や幹を腐らし、ついには庭樹全体を枯らしてしまう恐れがあります。見つけ次第早急に手当を行います。枝や幹の材内に侵入した腐朽菌を外から完全に殺菌することは不可能です。したがって、腐朽の進行を少しでも遅らせることに力点を置きます。まず柔らかく腐朽した部分をできる限り取り出し、少し堅い部分もノミなどで削り取り、腐朽部に雨水が溜まらないように工夫し、できる限り腐朽部が乾燥するように雨水の侵入、風通しなどに注意します。きれいに清掃し、ペースト状の殺菌剤あるいは墨汁を2、3回重ね塗りを行います。神社仏閣の大きな樹の腐朽部にはウレタンなどを充填することがありますが、庭樹の場合特に行う必要はないでしょう。倒伏の心配のある庭樹には、支柱を立てます。支柱は一本ではなく、鳥居型の2本足あるいは三方向から支柱をする3本支柱を行い、庭樹の風によるねじれを防ぎます。

2.枝・幹・樹皮

 1)てんぐ巣病 :病原菌の多くは不明

 サクラ類、タケ類、カシ・シイ類、ツツジ類、マツ類、キリ、アスナロ、カンバ類など多くの樹種に発生しますが、それぞれ病原菌は異なります。 サクラのソメイヨシノやマダケよく発生します。枝葉が正常な生長をせず、短い枝が多数形成され、 それらの枝に発生する葉は 矮小となります。被害枝を切り取り焼却処分に出します。

←サクラ類てんぐす病

←ササ類てんぐす病

 2)こう薬病 :病原菌は糸状菌(かび)

 数種のこう薬病菌があり、菌糸膜の色で分けています。発生には必ずカイガラムシが関与しています。枝、幹の表面がビロード状の厚い菌糸膜でおおわれ、細い枝はこのため衰弱枯死することがあります。庭樹にカイガラムシが発生し、これにこう薬病菌が着生または寄生し、菌糸膜を形成します。防除は冬季に石灰イオウ合剤、または機械油乳剤を散布しカイガラムシを防除します。

 「膏薬」が枝幹に付くことにより、古木的な雰囲気を醸し出しますが、庭樹にとってはよくありませんので、除去につとめてください。

←ウメ褐色こうやく病

←アオギリこうやく病

 3)地衣類 隠花植物

 菌類と藻類とが共生する隠花植物の総称です。枝や幹にウメノキゴケ、サルオガセなどが着生する。樹勢衰退が始まっている、衰退している庭樹に多発します。地衣類が着生したため樹勢衰退が起こったのではなく、何らかの原因で樹勢衰退が起こり、後から地衣類が着生します。庭樹の環境改善を行い、樹勢回復をはかります。木酢液等の散布を数回行うと地衣類は枯死しますが、樹皮からはなかなか剥離しません。水圧バーカで洗い落とす方法もあるが、根本的な治療ではありません。

←マツ類ウメノキゴケ

マツ類ウメノキゴケ

 4)ヤドリギ類 高等植物

 落葉広葉樹にヤドリギ、ツバキ・ヒサカキにヒノキバヤドリギ、アカマツなど針葉樹にマツグミが寄生します。寄生された枝を切り取ります。切り跡には塗布剤、墨汁などを数回重ね塗りしておきます。

ヤドリギ(サクラ)

ヒノキバヤドリギ(ツバキ)

 5)材質腐朽 :病原菌は糸状菌(かび)

 材質腐朽菌によって、生立木の枝幹あるいは根株を腐らせる被害を総称して材質腐朽病と言います。多くはサルノコシカケの仲間によって起こされ、きのこが確認されたときにはすでに腐朽が相当進んでいます。外科的手術が必要です。整枝剪定後の傷からも腐朽菌は侵入しますので、直径1cm以上の傷には塗布剤または墨汁を数回重ね塗りをしておきます。地上部、地下部の生育環境を改善し、樹勢回復をはかります。

不定根(サクラ)

コフキサルノコシカケ(ケヤキ)

3.葉

 1)白も(藻)病 :病原菌は糸状菌(かび)

 日当たり、風通しの悪い、湿った環境に生育する常緑広葉樹に多く発生します。主として葉の表面に灰白色、緑灰色の1〜2cmの斑紋を作り、古くなると茶褐色になります。被害病葉は落葉せず、長く樹上にとどまるため、著しく美観を損ねます。風通し、日当たり良くすることである程度予防できます。

白藻病(ツバキ)

白藻病(シュロ)

 2)ビロード病 :病原菌はフシダニ

 カエデ類、クスノキ、カシ類等に良く発生します。病原菌による被害ではなく、フシダニの仲間による被害です。葉の裏面に褐色のビロード状の斑点を形成します。葉の表面には、隆起した症状を示します。このため葉が奇形になり、美観を損ねる。落葉も含めた被害病葉を集めて焼却処分にだします。

 3)うどんこ病 :病原菌は糸状菌(かび)

 表うどんこ病と裏うどんこ病および紫かび病とがあります。

  表うどんこ病

 多くの樹木の葉、新梢が、小麦粉(うどん粉)をまぶしたように白色紛状(菌糸体)に包まれます。秋にはこの中に小黒点が形成され、独特の付属枝を持った病原菌の子のう果(胞子が多数含まれた組織)ができ、伝染源になります。

うどんこ病(アラカシ)

  裏うどんこ病

 おもに葉裏に白色菌そうができ、葉表は黄色〜黄緑色になります。

対処方法は以下のとおりです。

1.被害病葉及び病落葉をていねいに集めて焼却する。

2.枝幹が透けて見える程度に枝透かしをする。

3.樹勢衰退を起こしている場合が多いので、地表面を耕し土中に新鮮な空気が充分にはいるようにする。

4.土壌を排水、通気よく改良し、根を健全に育てる。窒素系肥料を控える。

 4)紫かび病

 葉裏に褐色ビロード状の菌そうをができ、葉表は黄緑色になります。 枝についている被害病葉、および落葉を集めて焼却処分に出します。また、日当たり、通風改善を行い予防します。

 5)すす病 :病原菌は糸状菌(かび)

 うどんこ病が白色病斑を作るのに対し、すす病黒色病斑を、葉や新梢に形成します。すす病菌は寄生性すす病菌と腐生性すす病菌とに分けられ、その多くは腐生性すす病菌です。

 腐生性すす病菌はカイガラムシやアブラムシの排泄物(甘露と言われる)を栄養源にします。したがって、殺菌剤による防除よりもカイガラムシ、アブラムシなどの吸汁性害虫の防除につとめます。新芽展開期に被害を受けると新梢、新葉が煤黒く奇形になります。

 寄生性すす病は日当たり、通風を改善することによって防げます。

 星形すす病は、寄生性すす病菌で、吸汁性害虫とは関係無しに発生します。葉表面及び裏面に黒色濃黒色微小粒点ができ、のち直径1cmの大きさになります。

すす病(アオキ)

星形すす病(アオキ)

 6)さび病 :病原菌は糸状菌(かび)

 多種類のさび病菌があり、それぞれ特徴のある生活史を持っています。枝幹、葉の裏または表に黄色から黄褐色のさび色に似た胞子を多数形成します。多くのさび病菌は、全く異なる2種類の植物の間を往復して生活しています。これを宿主交代と言い、例えばマツこぶ病は、マツとブナ科樹木、またはキハダなどミカン科樹木と、ボケのさび病は、ボケとカイズカイブキと、ポプラ葉さび病は、ポプラとカラマツとの間を行き来しています。2つの植物のうち経済的に重要な方を宿主、他方を中間宿主と言います。病気の発生には、両者が近くにあることが必要で、防除には中間寄主を除去します。病原菌の生活史を良く観察し、それに見合った時期に薬剤散布をする必要があります。

葉さび病(アカマツ)

さび病(カリン)

 7)もち病 :病原菌は糸状菌(かび)

 ツバキ、サザンカ、ツツジ類に発生する。春の展葉期後葉、花、新梢の一部または全体が膨らんで、その表面が病原菌の胞子である白粉でおおわれます。やがて赤褐色、褐色となり、ミイラ状となります。白紛で覆われるまでに手で取り除き、焼却処分に出します。

もち病(ツツジ)

もち病(サザンカ)

 8)ウイルス病(モザイク病):病原菌はウイルス

 ウイルス病に感染すると、葉に黄緑色〜濃緑色のモザイク状の斑が入ります。葉だけでなく花にも感染し、奇形花あるいはまだらな色になった花弁が形成されます。激しく感染した場合は、葉も花も萎縮して生育不良になります。窒素系肥料を多く施肥し葉色を濃くすることで、見かけ上防除できますが根本的な治療ではありません。多くの庭樹が感染しますが、その病原菌(ウイルス)は必ずしも同じではありません。樹木に加害するアブラムシ類による伝染が大半を占めますので、これらの吸汁性害虫の駆除が重要です。また、罹病樹を整枝剪定したはさみ等を用いて健全樹の枝葉を切った場合、その切り口が傷口となり、その部分からウイルスが感染して増殖します。増殖したウイルスは樹体内を樹液の流れにのって移動し、樹全体が罹病します。

ウイルス病(ツバキ)

雲紋病(キョウチクトウ)


  はじめに
T 庭樹の組織とその働き
U 庭樹の環境
V 樹勢回復
W 肥料
X 多種類の庭樹に共通して発生する病害
Y 多種類の庭樹に共通して発生する害虫
Z 農薬
[ 整枝剪定
\ 移植
] 庭樹の増殖
]T もっと詳しく知りたい方に
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