自然志向が高まる中、人工的な化学薬品よりも天然薬剤が好まれる傾向にあります。木材の防腐や防かび処理に際しても、天然の薬剤を使いたいという要望が、当試験場にもしばしば寄せられます。ここでは、天然薬剤によって木材の防かび処理が可能かどうかを考えたいと思います。
まず初めに話題にしたいのは、天然薬剤の安全性です。「どうして天然薬剤を使いたいのですか」と質問しますと、「天然薬剤は安全だから」と答える人がいます。ちょっとまってください。毒キノコ、フグ、トリカブト等、野生生物の中には猛毒を持つものがあります。漆にかぶれたり、スギ花粉で花粉症になったりもします。化学薬品はというと、この中にも毒性の高いものと低いものがあります。したがって、安全性に関しては、天然薬剤も化学薬品も個々に吟味して使用する必要があると言えます。
さて、最も重要なのは十分な防かび効力を有する薬剤があるかどうかです。試験は、まずブナ辺材試験体を薬液中に3分間浸せきさせた後、2日間自然に乾燥させることから始めます。次に、シャーレに寒天を固め、その上に、カビの胞子懸濁液、ネットおよび薬剤処理済みの試験体を置き、蓋をします。気温26±2℃、湿度70〜80%の培養室で4週間静置後、試験体の側面および上面にカビがどれだけ生えたかで、薬剤の有効性を評価します。今回は天然薬剤として、柿渋、木酢液、ヒノキ精油およびヒバ精油を使用しました。下図に試験終了時の様子を示します。


また、試験結果を表にまとめました。
表 天然薬剤による防かび効力試験の結果
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被害度が0ならば、カビがまったくはえなかったことを意味し、3ならば、試験体の側面全面と上面1/3以上にかびが生えたことを意味します。ここでは使用した5種類のカビによる被害度を平均して示しました。柿渋やヒバ精油には高い防かび効力があることがわかります。また、今回使用した木酢液は、当試験場の炭窯で採取したもので、これには防かび効果はありませんでした。しかし、木酢液の成分は炭の材料や焼き方で変化しますので、今回の結果がすべての木酢液に当てはまるかどうかはわかりません。
さらに注意しなければならないのは、この成績は薬剤処理直後の初期の性能であり、この性能が長期間維持されるかどうかはわからないという点です。柿渋は水によって溶脱すると言われています。また、精油の一部は徐々に揮発します。
以上をまとめますと、天然薬剤で木材の防かび処理をすることは不可能ではありませんが、性能的には化学薬品の方が長期間安定で優れたものが多く、低価格です。さて、あなたは、天然薬剤と化学薬品のどちらを選択しますか?
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